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危機管理について

新型コロナウィルスが猛威を振るい、私たちが思う、少し前までの災害に対する対策とはまた別の心構えが必要な時代となりました。

「危機」という言葉は、「危機管理」と同様に様々な場面で用いられていますが、その対象は広く、定義は多様です。多くの方が、災害や危機として「台風」や「地震」を思い浮かべることでしょう。一方、2001年のアメリカ同時多発テロなどを反映して、テロ事件や、凶悪犯罪を危機としてとらえる方もいるでしょう。また、2002年以降、問題が顕在化した、新興感染症などの感染症に対する意識も高まってきた昨今でした。

日本で「危機管理」という言葉が自然災害による被害対応に関して使用されるようになったのは1995年の阪神淡路大震災の時でした。このとき、「日本政府の危機管理が適切でない」と批判され、この時点で「危機管理」という言葉は、「国家的危機に対する国家首脳の対処」という意味から大きく拡大し、「危機」とは「社会に重大な被害を生ずる事象」を意味し、これには自然現象も人為的災害も含むこととなりました。

「危機」とされる事象の整理

危機の事象として次のようなものがあります。

1.自然災害―災害対策基本法は、自然災害の内容として「暴風・竜巻・豪雨・洪水・高潮・地震・津波・火山噴火そのたの異常な気象現象」を掲げています。

2.大事故―災害対策基本法は災害として自然災害の次に「大規模な火事もしくは爆発」をあげています。木造家屋を中心とする日本では、火災は古くから人々が恐れてきたものです。

3.事件―本来は、警察などの対象となるものであり、地域や自治体の危機管理の対象となるものではありませんでした。しかし、実際に重大に事件が発生すると、自治体は住民に対する避難誘導や救援・救助など様々な活動を求められます。

4.感染症―ほかの「危機」とはかなり性質が違い、行政の対応としても、継続的な「監視」そして「発見」が大切であり、何かあった時には、迅速に対策を講じる、ことになります。そして感染症対策では、同じ危機管理といっても、リスク・マネジメントが問題となります。リスクとは、もともと保険の分野に関係する言葉であり、一定の確率で発生しうる危険に対して保険をかけておくことがリスク・マネジメントであり、そのために「監視」と「発見」が重要です。

5.テロ・戦争―現代では「日本においてテロや戦争状態は絶対に生じない」と他人事で済ますことはできません。2003年にできた武力攻撃事態対処法は、内閣総理大臣に総合調整権を認めつつ、自治体の対応も定めています。また、2004年の国民保護法は、国が警報発令し、都道府県知事に避難指示・救援を、市町村にそれらの伝達・誘導・消防を求めています。

危機管理の活動

危機管理活動の内容は、「対処」(狭義の危機管理)が最も緊急性が高く注目されることが多いのですが、その前後に拡大して考えること(広義の危機管理)も必要です。分類として、

① 自然災害であれば、起こるメカニズムなどの「研究」が重要。

② 「予防」では防災まちづくり、耐震工事、防災訓練など幅広い。

③ 狭義の危機管理である「対処」は行政だけではなく、近年は民間のボランティア活動が不可欠。

④ 「修復」は自然災害では復旧・復興。不祥事では信用回復のための情報公開などが対象。

危機管理は、緊急の対処ばかりに焦点が当たりがちですが、研究が行われなければ改善はされず効果的な対処ができません。非常事態が発生する前から修復に関する準備が必ず必要です。そして、一つのある危機に対する対処の経験がほかの危機にも大いに役立つことを忘れてはいけないのです。

正確な情報伝達の重要性と対策

慎重な危機管理のもと、「減災」を考えるとき、二次災害を防止することが大切になります。とりわけ都市災害の場面では、膨大な人間をいかにコントロールするかにもっとも留意しなければなりません。そのカギは情報が握っているといっても過言ではありません。パニックはほとんどが不安から発生します。鎮めるためには、正確で適切な情報の提供です。デマ、流言を監視し、これを否定する正しい情報を繰り返し大量に流していくことで、人々の不安は消えていきます。あらゆる手段で正確な情報を冷静に発信し続けることが重要です。大災害時にはとにかく人々は情報を欲しがります。ネット上に誤った情報が流れ、大きな混乱が起きた東日本大震災時、ネットの情報には速報性のプラス面と、悪意であれ善意であれ、誤った情報が流されると、それがコピーされて広まり、いつまでも残ってしまうという致命的なマイナス面があります。このような特性を踏まえ、情報と正しく向き合い、正しく新しい情報を伝えることが必要で、情報の断絶はパニックの発生要因であることを忘れてはなりません。

ただし、冷静に対処しなければと思うあまり、正常性バイアスが働き、物事を正常の範囲だと自動的に認識する心の働きがあります。正常性バイアスは、心理学の用語で、災害心理学だけなく、医療用語としても使われます。私たちは予期しない事態に対峙したとき、「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働き、大丈夫大丈夫と心を落ち着けようとします。何か起きるたびに反応していると精神的に疲れてしまいますので、人間にはそのようなストレスを回避するための「脳の働き」「心の平穏を守る作用」が備わっています。ですが、この防御作用ともいえる「正常性バイアス」が度を超すと、事態はより深刻な状況になります。落ち着いて、正しく恐れ、行動することを躊躇せず、「空振りでも何事もなければそれでよし」という気持ちで臨みましょう。大切なのは、命です。

この新型コロナウィルス感染拡大が、早く収まり、安心して過ごせる世界になることを願ってやみません。手洗いうがいはもちろんですが、一人一人が日常の接触を8割抑え、感染を防止することでしか、拡大は防げません。知恵を絞って、相手を思いやり、町を想い、辛抱の時を心ひとつに過ごしましょう。お願いいたします。

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